ジンバブエのインフレ事情

ビジネス・経済

アフリカ南部に位置するジンバブエは、ハイパーインフレーションが発生している国として、聞いたことがある方もいるかもしれません。

現在のジンバブエのインフレ事情について、私自身が実際に訪問して感じたことも含めてお伝えできればと思います。

ジンバブエの概要

具体的なインフレ事情の前に少しジンバブエの概要についてご紹介します。

ジンバブエはアフリカ南部に位置し、南アフリカ・ボツワナ・ザンビア・モザンビークに囲まれた内陸国(海に面していない)です。

人口は約1,500万人、一人あたりGDPは約2,500ドル(PPPベース)で、南部アフリカの中でもかなり低い水準になっています。主要産業は石炭・金・プラチナ等の天然資源で、生活必需品の多くを南アフリカからの輸入に依存しています。

ザンビアとの国境には世界三大瀑布(滝)の一つであるVictoria fallsを有すことでも有名です。

37年間続いた独裁政権

ジンバブエはムガベ前大統領(2019年に亡くなった際には日本でも報道されていました)により、37年間にもわたり独裁政権が敷かれていました。アフリカの長期独裁政権の象徴的存在として知られ、各国との対立を生むことで制裁を受け、現在にも続くハイパーインフレの原因を作った人物でもあります。

ジンバブエの法定通貨

過去、大混乱とハイパーインフレを繰り返しているジンバブエでは、2019年から唯一の法定通貨としてRTGSドル(ジンバブエ・ドル)が採用されています。しかしRTGSドルもインフレが続いているため、暫定的にUSドルの流通も認められています。

頻繁に変わる通貨

元々ジンバブエではジンバブエ・ドルが法定通貨とされていたものの、ハイパーインフレに見舞われたため、2009年から複数外貨制が取り入れらました。それにより、ジンバブエ・ドルの他にUSドルや南アフリカ・ランドを含む9通貨も法定通貨として流通するようになります。この際インフレによりほぼ無価値となったジンバブエ・ドルは、実質的に流通が停止されました。

その後2016年、USドルと等価(1:1)で交換できる新たな自国通貨として、ボンドノートが導入されます。それでもインフレが進行したため、政府は即時決済ができるツールとして電子通貨を追加で導入します。

そして2019年に前出のボンドノートと電子通貨が統合され、新たにRTGSドルが誕生しました。

価値の保存機能を果たしていない

このように度々通貨が変更され、さらにはこの間にデノミによる通貨切り下げも何度も行われています。国民は通貨を保有していても、インフレが発生したり通貨自体が代わってしまうことがあるため、通貨本来の3機能の1つである「価値の保存機能」が果たされていません。

現在の法定通貨であるRTGSドルも同様にインフレが進行しており、持ち続けていると価値がどんどん目減りしていくことになります。

なぜインフレが進むのか

自国通貨については繰り返しインフレに見舞われていますが、これはなぜなのでしょうか。

それはこれまでの政策に対する国民の不信感によるものと思われます。度々通貨が変更されたりデノミが行われ、価値の保存機能がはたらいていません。そのため国民はまた同じことが繰り返されると考え、できる限り外貨やモノと交換したりしようとします。それによりさらにハイパーインフレが進行し、通貨変更やデノミ等の政策に至る悪循環が続いています。

闇両替で感じたこと

ここで実際に私が2018年にジンバブエを訪問した際に見聞きした実体験をお話しします。その時点ではボンドノートとUSドルの2種類が流通通貨として導入されており、両通貨は等価で交換できるものと法律で定められていました。

しかしながら自国通貨であるボンドノートについては、国民はいずれインフレが再燃すると感じています。実際にはUSドルと等価ではないと考えており、可能であればUSドルに両替したいと考えます。つまり少し多くのボンドノートを払ってでも、USドルと両替したがるのです。逆に言えば、1USドルを払えば、1ボンドノートを上回る金額が手に入ります。

ただ法律では等価として定められているため、この市場原理に応じた不等価の両替をすると違法になります。そこで存在していたのが「闇両替」です。

街中を歩いていると、静かに近寄ってきて両替を持ちかけてくる人が多々いました。彼らは外国人である(つまりUSドルを持っている)私に、当時の闇両替レートである1USドル=1.3ボンドノートでの両替を提案してきます。もちろんこれに応じて両替しているところを発見した場合、逮捕されてしまうことになります。街中には闇両替を取り締まる警察(?)がかなりおり、覆面も存在すると思われるため、非常に危険です。

ただ実際に店で買い物をする際には、USドルとボンドノートが等価として価格設定されており、どちらで支払いをしても良いことになります。そうであれば当然ながらボンドノートで支払いをした方が実質的に安く購入できます。ここに両通貨の「歪み」が存在しており、インフレが止まらない要因になっていたと考えられます。

実際に会ったローカルドライバーの話

当時外国の政府系機関に勤めていた人は、USドル建てで給料を受け取っていました。ジンバブエを訪問する旅行客も同様にUSドルを持ち込むことになります。

私が友人とジンバブエ国内を旅行した際、タクシーを利用して観光地のVictoria fallsを訪れました。その際タクシードライバーは、私たちの入場チケットを代わりに購入してあげると言うのです。事前に入場料は調べており、そのドライバーが言う値段は全く上乗せしているものではなかったため、親切心で提案してくれている(実際アフリカの方々は非常に心優しいです)と思い購入をお願いしました。

私たち数名分のUSドルをドライバーに渡し、ドライバーがチケットカウンターで購入してくれている場面を見ていると、なんとそのドライバーは私たちが渡したUSドルではなく自身で持っていたボンドノートで払っていたのです。その後私たちは問題なくドライバーから入場チケットを受け取り、Victoria fallsを事前に調べた入場料で楽しむことができました。

この事例で私たちは全く損をしたわけではありません。本来の入場料をUSドルで支払い、入場チケットを手に入れたことになります。一方ドライバーは、私たちから受け取ったUSドルと同額のボンドノートでチケットを購入しました。つまり、ボンドノートと同額のUSドルを手に入れたわけです。

この行為は全く違法ではありませんし、むしろ法律に則った行為です。ただそのドライバーは両通貨の価値に「歪み」が生じていることを認識しており、その時点では1USドル=1.3ボンドノートが相場でしたから、それを利用して稼いだことになります(その後闇両替でUSドルをボンドノートに交換すれば1.3倍になるので)。

こうしてボンドノートは信頼を得られず次第に価値が低下していき、その後RTGSドルへに統合されるに至りました。

現在の状況

2019年にRTGSドルが導入され、それまで利用されていたUSドル等の利用が禁止されたようです。しかしながらそのRTGSドルのインフレが進行しており、通貨の混乱は続いています。

資源をそれなりに有しポテンシャルのある国ではあるものの、不安定な通貨や政治が足を引っ張り、未だに貧困を抜け出せずにいます。危機的経済状況のため、周辺国に出稼ぎに行くジンバブエ人も多々いるのですが、雇用機会が奪われる懸念から周辺国としてはウェルカムではないようです。

今後ジンバブエの通貨と政治が安定し、まずは経済成長の土台が形成されることを期待したいものです。その先に経済成長は必ずやついてくるものと思います。

それではまた!

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