選択制DC(確定拠出年金)のメリットと注意点は?

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DC(確定拠出年金)の特徴については以前の記事でも述べましたが、今回はその中の一つの制度である「選択制DC」についてご紹介します。所属している企業に選択制DCが導入されているものの、そもそもDCが何か分からない、更に選択制DCは通常のDCとどのように違うのか分からない、という方も多いと思います。

そんな方々に向けて、選択制DCとはどのような制度なのか、制度を有効活用するにはどうすれば良いのかについて解説します。

DC(確定拠出年金)の特徴についてはこちら↓

選択制DCとは

選択制DCは企業型DC(確定拠出年金)制度の一種で、従業員が給料の一部を年金に拠出するか給料としてそのまま受け取るかを選択できる制度です。

一般的な企業型DCでは、企業が従業員のために資金の拠出を行い、それを年金資産として従業員が各個人で運用をしていきます。そのため従業員自身は資金の拠出を原則として行いません(マッチング拠出やiDeCoを併用する場合除く)。企業にとっては、通常の給料に上乗せし退職金としてDCに資金を拠出することになるため、拠出金は企業の負担となります。

一方で選択制DCの場合、従業員は給料の一部をDCへの拠出に充てるかそのまま給料として受け取るかを選択することができます。DCに拠出する場合には、その拠出額を差し引いた金額を従業員は給料として受け取ることになります。企業にとっては給料分のみを支払えばよく、追加的な拠出はありません。

例として月給30万円、拠出上限額5.5万円(現行制度の上限額)の選択制DCを設けている企業があるとします。このケースでは一般的に従業員は0円〜5.5万円の範囲でDCへの拠出額を選択することができます。もし従業員が上限の5.5万円の拠出を選択したとすると、残りの24.5万円を月給として受け取ることになります。拠出された5.5万円は毎月運用され、将来60歳以降に受給することが可能です。企業としては月給の30万円のみを負担し、従業員がどちらを選択したとしても給料の負担額に差はありません。

ただし実質的には、退職金の積立相当額を毎月の給料に含めて従業員に支払うことになるため、企業にとっては選択制DCを導入したからといって全体の負担額が減るというわけではありません。

選択制DCのメリット

選択制DCには、従業員・企業それぞれの視点から以下のメリットがあります。

従業員メリット① 自らの意思でDCへの拠出か給料での受け取りを選択可能

一般的な企業型DCでは従業員はDCに強制加入となるため、従業員にとって選択の余地はありません。例えDCや投資に対して理解がない場合でも、企業が導入を決めた場合には強制的に移行し加入することになります。

それに対し選択制DCでは、従業員自らの選択によりDCへの拠出か給料での受け取りかを決定できます。また金額も柔軟に設定できるケースが多い模様で、DCへの拠出半分、残り半分を給料に回すという選択肢もあります。後述する税・社会保険料のメリットを無視してでも今すぐ給料を受け取りたい従業員もいますので、個々人の意思に応じた柔軟な制度と言えます。

従業員メリット② DCに拠出することで所得税・住民税・社会保険料負担を低減可能

従業員がDCに拠出することを選択した場合、その拠出額は給料ではないことになります。つまり本来の給料から拠出額を差し引いた金額が、給料ということになります(課税所得を算出する際の控除ではありません)。

拠出額を差し引いた後の給料をベースに所得税・住民税を計算することになるため、結果として所得税・住民税の減税になります。なおiDeco等で拠出をした場合には、課税所得を算出する際に拠出額分を控除することが可能であるため、選択制DCを利用した場合と同様の減税効果があります。

iDeCoや企業型DCと異なるのは、社会保険料です。iDeCoや企業型DCでは拠出をしたからといって社会保険料が安く済むわけではありません。一方で選択型DCで拠出をした場合は、給料自体が低いことになるため社会保険料を算出する際の「等級」が低くなります。その結果として社会保険料である厚生年金・健康保険等を低く抑えることが可能です。

社会保険料はざっくり額面給与の約15%(従業員負担分)を占めますので、拠出額 x 15%分の社会保険料を削減できる計算になります。

従業員メリット③ DCの利点を最大限活用可能

上記2つのメリットのまとめのようになりますが、選択制DCでは従業員が自らの選択で拠出額を設定可能です。そのため目先の資金に余裕がある人は、上限額までDCに拠出をすることで、最大限に所得税・住民税・社会保険料を低減することができます。

年収が高い人ほどその効果はより大きくなるため、選択制DCの活用は欠かせません。

加えてDCでは運用益が非課税であるメリットもあるため、より多くの資金をDCに投入して最大限にDC制度のメリットを活用することが可能となります。

企業メリット① 社会保険料負担を低減可能

従業員が選択制DCで拠出を選んだ場合、給料自体が低い扱いとなり、従業員の社会保険料を算出する際の等級も本来より下がることは先にお伝えしました。

社会保険料は従業員と企業が原則として折半することになっているため、企業側も負担する社会保険料が減ることになります。この点企業にとっては給料の総額は変わらないにも関わらず社会保険料負担を抑制できる可能性があるため、非常に大きなメリットです(もし従業員が給料での受け取りを選択した場合は、社会保険料負担の抑制効果はありません)。

選択制DCの注意点

上記メリットの一方でいくつか注意点もあります。

将来受給する厚生年金が減少

メリットの一つとして従業員は社会保険料負担の低減が可能ですが、一方で将来受給する厚生年金の金額もそれに応じて下がってしまうというデメリットも存在します。これは厚生年金の受給金額が現役時代の納付額に応じて決定されるためです。

ただしそれ以外の社会保険料である健康保険や介護保険は、納付額がいくら大きいとしても将来それに応じて受給できるわけではありませんし、受けるサービスのグレードが上がるわけでもありません。そのため社会保険料の納付額を抑制できることはメリットのみです。

選択制DC実施企業の要件強化

2020年10月より、選択制DCを実施している企業への要件として、「社会保険・雇用保険等の給付額にも影響する可能性を含めて、事業主は従業員に正確な説明を行う必要があること」が追加されました。あたり前といえばあたり前なのですが、上記のデメリットが存在することを従業員が理解できるように、丁寧に説明することが企業に求められるようになりました。

実際問題として、やはり従業員の大半は選択制DCがどのような制度なのか理解しておらず、メリット・デメリットを把握していません。この点企業は継続教育を実施していくことで、そのような制度に疎い従業員でも理解できるように努めていかなければなりません。

そもそも制度導入を主導する人事・経理・マネジメント等でも十分な理解が不足しているケースが多くあり、その場合には今後選択制DCの導入が認められないことになります。

まとめ

理解が難しい選択制DC制度ではありますが、従業員にとっても企業にとってもメリットの非常に大きい制度です。正しく理解し最大限に活用することで、お互いがWin-Winになることが可能です。

もし既に所属先に選択制DCが導入されているという方は、上限額まで拠出することを強くおすすめします。目先の給与としては減りますが、所得税・住民税・社会保険料の削減効果は強烈です。ふるさと納税や医療費控除等を検討する前に、DCへの拠出が最優先事項です。

DCの運用益非課税メリットも活用することで、効果的に将来に向けた資産形成を進めることができます。

それではまた!

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