日産自動車(7201)の銘柄分析

企業分析

「やっちゃえ日産」のCMでお馴染みの日産自動車。カルロス・ゴーンの騒動もまだまだ記憶に新しいところですね。

今回は日本を代表する大企業である日産自動車(7201)について分析してみたいと思います。

日産自動車の概要

皆さんご存知のとおり、日産自動車は主に乗用車の製造・販売および関連事業を手掛ける自動車メーカーです。日本には世界有数の自動車メーカーが数多く存在する中、日産は単体で2019年度に493万台のグローバル販売を記録し、日系メーカーではトヨタに次いで、ホンダと2番手グループに位置しています。

引用元:日産自動車株式会社HP_グローバル販売台数

売上も10兆円を上回っており、日本企業の売上高ランキングで毎年トップ10に入るほどの大企業です。

もう少し様々な角度から日産自動車の概要を見ていきます。

ルノー・日産・三菱アライアンス

日産は、フランスのルノー、日本の三菱自動車と3社でアライアンスを形成しています。アライアンス3社合計で2019年(暦年)に1,015万台を販売しており、これはVWグループ、トヨタグループに次ぐ世界3番手です。

アライアンスの資本関係としては、ルノーが日産株式の43%を保有しており、逆に日産はルノー株式の15%を保有しています。また日産は三菱自動車が経営難に陥っていた際に三菱自動車株の34%を獲得しており、その逆の株式保有はありません。

特にルノーとの関係においては、従来カルロス・ゴーンが両社のCEOを兼務することで、圧倒的なリーダーシップによりアライアンスを牽引してきました。しかしゴーンが去った今、アライアンスの行方に不透明感が漂っています。

海外展開

当然のことながら日産は全世界的に事業を展開しています。現在はルノー・日産・三菱の3社で地域ごとにリーダーを選定してその企業を中心に展開していくことをアライアンスで定めています。その中で日産は、日本・北米・中国のリーダーを務めており、ルノーは欧州・アフリカ・南米、三菱自動車が東南アジアのリーダーです。

日産は日本での販売台数は決して多いと言えず、2019年度のグローバル販売台数493万台の内、日本は約10%程度しかありません。一方中国は約30%、米国は約25%を占めており、この2カ国だけで過半数となります。この2カ国は伸び率としても高く、今後さらにこの2カ国の比率が高まっていくと予想されます。

他の国でも幅広く展開していますが、台数を稼いでいる国・地域は他になく、マーケットシェアとしてもいずれも低い数字にとどまっています。

ビジネスセグメント

日産といえば自動車の製造・販売がイメージされると思いますが、自動車事業の他に販売金融事業も存在します。その2つの事業についてそれぞれ紹介します。

自動車事業

イメージのとおり自動車を製造して販売するという、自動車メーカーの根幹となるビジネスです。日産の連結売上高の内約80〜90%を占めており、2019年度の自動車事業のセグメント売上高は約10.4兆円でした。

それに対し利益は非常に低い傾向にあり、各年度によるブレも大きいのが特徴です。2019年度の自動車事業のセグメント利益は約660億円のみで、2020年度上期(2020年4月〜9月)に至っては約3,000億円の赤字です。第2四半期のみで見ると約820億円の赤字ですので、第1四半期よりは改善しているものの未だに赤字が続いています。

ちなみに競合のホンダの四輪事業(つまり日産と同じカテゴリー)は、2020年度上期が約700億円の赤字、第2四半期のみに限れば約1,250億円の黒字に転換しています。その点日産の回復が遅れているのは明らかです。

自動車事業は高性能化などによるコスト増の一方、販売価格の値上げが簡単ではないため利益が確保しづらい構造にあります。さらには日産車は年々相対的な競争力が落ちていると言われており、自動車販売のみでは十分な利益を確保できていません。対するトヨタなど競争力のあるメーカーは、コスト増に関わらず十分な利益を確保し続けており、マーケットシェアも徐々に拡大しています。

販売金融事業

日産のもう一つの事業は販売金融事業です。自動車は非常に高価な買い物であるため、ローンを設定して購入する方が大半を占めます。その際の金利収入などによって収益を獲得しています。

販売金融事業は売上高で見ると全体の10〜20%程度ですが、利益率はかなり高いです。苦戦する自動車事業に対し、販売金融事業は2020年度上半期に約1,400億円もの利益を挙げています。第2四半期のみで見ても約700億円の利益を挙げており、安定感もあります。

販売金融事業の利益はコロナ禍でむしろ前年度よりも伸びており、自動車事業の赤字の一部を埋める重要な役割を果たしています。販売金融事業は過去の自動車販売によるストックがあるため、一時的に自動車販売が急減したとしても直接的な影響は少ないと思われ、短期的な好不況の波を受けづらい傾向にあります。

ただし長期的に考えれば、あくまで販売金融事業は十分な自動車販売があって初めて成り立つビジネスであり、自動車販売の低迷が長く続くようでは、いずれ販売金融事業も減速することが予想されます。

財務状況

続いて日産の財務状況について財務三表を中心に確認します。

損益

ここ数年の日産の連結営業利益の推移は以下のとおりとなっています。年々減少傾向にあり、ついに2019年度は赤字に転落しました。

引用元:日産自動車株式会社HP_連結営業利益・連結売上高営業利益率

そして2020年度上半期は、営業利益が1,588億円の赤字となっています。第1四半期と第2四半期に分解すると、第2四半期で状況はだいぶ改善傾向にありますが、それでもなお赤字が継続しています。

引用元:日産自動車株式会社HP_2020年度上半期_決算説明プレゼンテーション

なお上記決算資料において、日産の中国事業は持分法適用会社とされていますので、営業利益段階では損益が反映されておらず、経常利益から中国事業の損益が反映されています。その結果、2020年度上半期は中国事業も大幅な赤字でしたので、経常利益としては2,318億円の赤字となりました。

さらに、コロナによる工場稼働停止に伴う損失が特別損失として計上されていますので、当期純利益はより赤字幅が大きくなり3,300億円の赤字です。何とか最終黒字を確保している自動車メーカーが多い中、日産は三菱自動車とともに大幅な赤字で、コロナの影響だけとは言い切れないほど厳しい状況です。

2020年度通期の業績予想も発表されましたが、売上高が約7.9兆円(19年度比△19.6%)、営業利益が3,400億円の赤字予想となっています。この数字はコロナが比較的落ち着いていた2020年11月12日に発表されたものですので、その後のコロナ再拡大を考慮すると、いずれ下方修正が発表されるものと思います。

貸借

続いて貸借の状況です。2020年度上半期末時点の概要を添付します。

引用元:日産自動車株式会社HP_2020年度上半期_決算短信

赤字の影響もあり若干純資産が減少しており、その結果として自己資本比率は22.1%まで低下しています。危険水域というわけではありませんが、競合他社が40%前後の自己資本比率を確保しているのと比べると、かなり低い水準です。

配当は今期から無配に転じており、わずか1〜2年前まで高配当株として有名だったとは思えません(当時は5〜6%程度の配当利回りでした…)。

なお自己資本比率は低い水準ですが、手元の現金は十分確保されています。2020年度上期末で約2.1兆円の現金及び預金があり、2019年度末から1.5倍に拡大されています。これはコロナ危機に備えて意図的に手元資金を厚くしているためです。さらに決算説明によると、これとは別に約2.0兆円のコミットメントラインを主要銀行に設定してもらっているとのことです。

そのため、目先の資金繰りに窮するということはまず考えづらく、それよりも根本的に赤字解消や事業構造改革の推進を図ることが重要になります。

また企業規模や実際の売上高に対して貸借対照表がやや大きいイメージがありますが、これは金融事業の債権等が含まれていることや、生産能力を過剰に持っていることに起因しているようです。過剰な生産能力削減は中期経営計画の中でも重大テーマとして掲げられていますので、この点は今後若干改善されていくものと思います。

キャッシュフロー

続いてキャッシュフローの状況です。特殊な販売金融事業を除いた自動車事業におけるフリーキャッシュフローは以下のとおりです。

引用元:日産自動車株式会社HP_2020年度上半期_決算説明プレゼンテーション

これを見ると、2020年度上半期は営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローともに大幅なマイナスとなっています。第2四半期だけ見ればプラスに転じていますが、第1四半期のマイナス幅があまりに大き過ぎて補い切れていません。

原因はやはりそもそも自動車事業で利益を出せていないことです。在庫圧縮や売掛金の回収などが第2四半期にかなり進捗したようですが、あくまで本業で利益が出せていないことには十分なキャッシュフローが得られません。

設備投資はかなり抑制傾向にあるようですので、今後市況が回復する中で日産の販売台数も順調に回復すれば、フリーキャッシュフローとしてはプラスが確保できると思われます。

なお財務キャッシュフローについては、コロナに備え手元資金を厚くするため、多額の借入を行いましたので、2020年度上半期で約4,000億円のプラスとなっています。この点は状況を考えれば全うですし、多少の金利負担増加があったとしても確実に安定した事業運営をする上で必要だったかと思います。それよりも短期だけではなく中長期も見据え、赤字に怯まず研究開発などの投資は継続しなければなりませんので、むしろ活用できるものは積極的に活用すべきかと思います。

投資指標

最後に、この記事執筆時点の2021年1月23日現在の投資指標です。

・株価 556.5円

・予想PER N/A

・PBR 0.60倍

・予想EPS △157.2円

株価は、2020年3月にリーマンショック時以来最低の311円を記録しました。その後年末にかけて日経平均全体が上昇したのに沿って、日産株も上昇傾向にあります。

今期は6,000億円超の最終赤字を見込んでいるため、予想PERも数字が出ていません。PBRは1倍を大きく下回っており割安とも捉えることはできますが、そもそも前期・今期の連続で最終赤字であり、決して安定感のある銘柄ではありませんので、リスクが非常に大きいと感じます。あまりにブレ幅があるため、投資指標もほとんどあてになりません。。。

課題と今後の見通し

ここまで主に、日産の概要や2020年度上半期実績に基づいた財務分析をしてきましたが、日産が現状抱えている課題や今後どうなるかという見通しについても分析したいと思います。

CASE対応

現在自動車業界は「100年に一度の大変革時代」と言われています。特にConnected、Automated、Shared、Electricの頭文字を取ったCASEが盛んに叫ばれています。

自動車各社は従来のように自動車メーカーの競合他社と競い合っていれば良いだけの時代ではなく、今後は業種の垣根を越えた争いになります。各社は来る時代に向けてCASE対応を進めていますが、果たして日産はどのような状況なのでしょうか。日産に関して特に挙げられることの多いAutomatedとElectricを中心に見ていきます。

まずAutomatedについては、ProPILOTとして自動運転技術を搭載した車を数年前から販売しています。現在はProPILOT2.0として、レベル2に相当する自動運転技術が既に市販されており、ユーザーからも高い人気を得ています。

近い将来レベル3の自動運転車も発売されると予想され、現時点でAutomatedの実用化において先頭集団にいることは間違いありません。だからといって今後も先頭集団であり続ける保証は全くなく、むしろ日産は開発リソースが限られますので、いずれトヨタや他業種参入組に遅れを取ってしまうことが考えられます。

次にElectricについてですが、日産といえば以前から電気自動車のリーフが大変有名です。2010年の初代モデル発売以降アップデートを繰り返し、最新モデルでは航続距離458kmも可能だそうです。しかしリーフはまだまだ車体価格が高く、量販車というよりは広告的な側面が強いと考えています。徐々に実用車に近づきつつあり、補助金等も組み合わせることで量販車となる日も近いかもしれません。

また日産はe-POWERが人気を博しており、2018年にはe-POWERを搭載したノートが国内の車種別販売でトップとなりました。これまでハイブリッド技術で大幅な遅れを取っていた日産ですが、それを逆手にe-POWERで挽回を図っています。e-POWERは日産がこれまで培ってきた電気自動車のノウハウが活かしやすい領域ですので、今後どのように展開されていくかに注目されます。日産e-POWERは一般的なハイブリッド車と比べて構造がシンプルでコストも抑えられていることから、利益の面でも今後さらに搭載車種や地域が増えていくことで貢献することが期待できます。

上記のように順調に見える日産のCASE対応ですが、やはりスケールやリソースで他社に劣りますので、将来に亘って競争力を確保できるかが懸念されます。

中期経営計画とその進展

新たにCEOに就任した日本電産出身の内田氏のもと、2020年5月に「NISSAN NEXT」として中期経営計画が発表されました。

目玉の一つが2018年度比3,000億円に及ぶ固定費の削減で、過剰な生産能力や車種数の削減を推進するとのことです。特に生産能力については、カルロス・ゴーン時代に拡大路線を敷いていたことから、各国に過剰な生産設備・人員を抱えています。早速インドネシア・スペイン・フィリピンで工場の閉鎖が発表されており、進捗は順調と言えます。

しかしながら工場閉鎖はその国の雇用にも大打撃を与えることから、各国で軋轢を生んでいます。余剰な資産・人員のリストラは現状を考えればやむを得ないことではありますが、社会と共生する一企業として非難されるべき行為だと思います。その点長期的な視点で経営を続けるトヨタとは、企業の社会的責任を果たしているかという側面で雲泥の差があるように感じます。

ただいずれにしろ日産の中期経営計画は順調に進められており、他にも地域の選択と集中によって、これまでの拡大路線から方針転換しています。日産はコア市場である日本・中国・米国に集中するとしており、リソースが限られていることやマーケットシェアという観点で妥当な戦略かと思います。

また収益の面でも、従来は販売台数確保のために特に中国と米国において多額の販売奨励金を積んでいましたが、台数主義から台あたり利益主義へと移行し、量より質を追う姿勢を鮮明にしています。

全体として中期経営計画に目新しいものはなくインパクトに欠ける部分はありますが、まずは掲げた構造改革を粛々と推進してもらいたいものです。

ルノー・日産・三菱アライアンス

先にも述べたとおり、現在3社でアライアンスを組んでいますが、決して順調とは言えません。カルロス・ゴーン時代に超トップダウンで調達や設計を始めとした各機能のシナジー創出が進められましたが、それぞれが主導権を握ろうとする争いが勃発するなどうまく機能していないようです。

2020年5月にアライアンスの取り組み方針が発表されましたが、やや抽象的できれい事が並べられているだけのようにも感じます。実態は当事者にしか分かりませんが、果たして順調に進んでいるのでしょうか。

近年はアライアンスの3社とも業績が芳しくなく、自動車業界におけるステータスや競争力も年々低下しているように感じられます。中途半端な資本構成と連携関係であることから、今後抜本的な見直しが発生する可能性も十分考えられます。

企業体質

日産ではここ数年不祥事や騒動が相次いでいます。記憶に新しい一連のカルロス・ゴーン騒動、無資格者による検査問題、排気ガス性能検査結果改ざん問題、ブレーキ検査の数値かさ上げ。日本を代表する企業としてあり得ないほど問題が続出しています。

謝罪会見や不正の報告が度々行われ、その都度再発防止策やガバナンス強化などを掲げていますが、それでも終息する気配はありません。これは企業体質によるものと思われ、不祥事が続く企業の典型的なパターンと言えます。長年の超トップダウン経営や成果主義が悪い方向に作用し、それぞれの現場で都合の悪い数字や事実は隠蔽しようとする習慣が身に付いてしまっているのだと思います。恐らく明るみになった不正は氷山の一角で、実際にはさらに多くの不正が隠されていると想定されます。

このような企業体質を一掃するのは難しく、「また何かやらかすのでは?」と疑ってしまいます。経営を立て直すことや将来に向けた構造改革も重要ですが、まずは企業の基本として不正が無いよう、形式だけではないガバナンス強化が推進されることを願います。

さいごに

長くなりましたがここまで日産自動車の現状と今後の見込みについて分析してきました。

「やっちゃえ日産」ではなく「やっちゃった日産」などと揶揄されており、不正の続出以降は業績も年々減少傾向にあります。非常に厳しい状況ではあるものの、何とか乗り越えて日本を代表する自動車メーカーとして再び業界をリードしてもらうことを願います。

元来日産は技術力に定評のある企業ですし、個々人で見ても大変優秀な人材が揃ったエリート集団です。舵取りさえうまくされれば、必ずや近い将来飛躍することと思います。

ただし現状を見る限り、投資銘柄という観点ではあまりにリスクが高く、個人的には投資対象にならないと感じました。あくまで私個人の見解ですので、投資は自己判断・自己責任でお願い致します。

最後までお読みいただきありがとうございました!

それではまた!

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