コマツ(6301)の銘柄分析

企業分析

建設・鉱山機械で日本No.1、世界でも米キャタピラーに次ぐNo.2のコマツ(正式名称:株式会社小松製作所)。

近年あらゆる企業が取り組もうとしている「DX」や「IoT」について、メーカーの中でかなり早い段階から本格的に実施してきたことでも知られています。

今回は、建設・鉱山機械業界だけでなく、日本の製造業をも代表するコマツについて分析してみたいと思います。

コマツの概要

日本を代表する企業であるコマツについて、まずは概要をご紹介します。

連結売上高

コマツの連結売上高は近年減少傾向にありますが、FY20の予想は通期で約2.1兆円です。FY17以降の四半期別売上高の推移も分かりやすい資料が公表されています。

引用元:コマツ2020年度第3四半期決算説明会

以前は四半期で7,000億円程度の売上があった時もありましたが、FY20についてはコロナの影響もあり大幅に減少しています。しかしながら第1四半期以降、徐々に持ち直しの傾向にあることも読み取れます。第4四半期は第3四半期と同等もしくはそれ以上の売上が見込まれます。

なお地域別では全世界バランス良く展開されており、その中でも特に売上の比率が多いのは北米(約25%)、次いで日本(約15%)、さらに中南米(約15%)といった地域です。コマツは「中国関連銘柄」と称されることが多いですが、実際には数年前から中国の売上比率は低下傾向にあり、現在では10%にも届きません。コマツはその点について自ら何度も説明していますが、メディアを中心とした世間の認識との相違が生じています。

ダントツ経営

コマツの経営方針のキーワードとして、「ダントツ」が挙げられます。商品・サービス・ソリューションにおいて、ライバルを寄せ付けない圧倒的な特長を持たせることで付加価値をもたらすという方針です。ライバルにわずかに先んじるのではなく、3〜5年は追いつかれないような競争力のある機能やサービスを目指しています。商品で言えば「ダントツ商品」として、低燃費・高い安全性・ITなどが重要項目として挙げられており、これらの項目を徹底的に伸ばしていく戦略を掲げています。

非常に明快な戦略で、顧客にとってはコマツといえば〇〇という特長を認識しやすいですし、社内の開発陣にとっても目指すべき方向と定量的目標があるため、全員で同じ方向を向いて一直線に開発を進められる効果があるのではないかと思います。

競合

コマツは建設・鉱山機械で米キャタピラーに次ぐ世界No.2に位置しています。それに続く競合としては、日本勢では日立建機やコベルコ建機、欧州勢ではボルボやリープヘル、他に韓国の現代や中国の三一重工などが挙げられます。特に中国勢は価格競争力を武器に近年飛躍が著しく、代表格の三一重工はコマツの時価総額を既に越えたとのことです。中国市場の伸びを上回る成長率を達成していることに加え、近年では中国市場以外においても相当な存在感を示しています。

価格競争力だけではなく商品力も急速に高まっていくことから、コマツにとっては今後さらに手強い相手となっていくことは確実です。相対的優位性のあるサービスやソリューション力を強化して戦っていくことが求められます。

ビジネスセグメント

コマツのビジネスセグメントと、それぞれの大まかな売上比率は以下のとおりです。

①建設機械・車両(約90%)

②リテールファイナンス(約3%)

③産業機械他(約7%)

明らかに①建設機械・車両が大半を占めており、利益の比率も大きく差はありません。

①建設機械・車両

コマツの屋台骨となっている事業で、建設・鉱山機械、フォークリフト、林業機械、資源リサイクル機械、地下機械が含まれます。特にこの中でも建設・鉱山機械が主力であり、油圧ショベル、ブルドーザー、ダンプトラック等が代表商品として挙げられます。これらは業界で主要7建機と呼ばれ、特に需要の大きい商品群です。

②リテールファイナンス

顧客や販売代理店に対して販売金融を行っている事業です。コマツの商品は高価なものばかりですから、その販売にあたってローンを提供することなどによって収益を獲得しています。上記の建設・鉱山機械を中心に、コマツが販売している商品は他業界と比べて使用期間が圧倒的に長く、再販価値が高いという特徴があります。そのため担保価値も高いため、万が一貸し倒れになった場合でもその損失は限定的であると見込んでいます。

メーカーが自らファイナンス事業を展開するのは自動車業界にもよく見られる特徴です。ただコマツの場合、ファイナンス事業で積極的に収益を獲得しようというよりは、あくまで顧客の資金負担を軽減させることで購入のハードルを下げることを目的としています。また残価設定等も設けることで、買い替えサイクルの促進、中古市場をコントロールするねらいもあるとのことです。

今後劇的にこの事業が伸びることは考えづらいですが、コマツの好財務を活用して今後も一定の収益をもたらすことが期待されます。

③産業機械他

自動車用の大型プレス機械や、板金機械、工作機械、半導体露光装置用光源(エキシマレーザー)
などを提供している事業です。自動車等のメーカーの工場に導入され、高価なものでは1機で数十億円にものぼります。企業の設備投資に影響される事業のため、コロナ禍で多少減速はしているものの、現時点で大打撃には至っていません。

この事業はコマツNTCとコマツ産機が中心となって担っており、コマツ連結の数字としてはもちろん反映されるものの、コマツ単体の事業とは切り離されているため、あまりコマツから有益な情報は発信されていませんでした。

決算・財務状況

2021年1月29日に、FY20の第3四半期の決算が発表されました。全体的には第1第2四半期の不調からやや立て直してきた感があり、第3四半期に限って言えば前年同期に迫ってきています。

損益

まずFY20の第1〜第3四半期の「累計」です。

引用元:コマツ2020年度第3四半期決算説明会

連結売上高は前年同期比約17.2%減で、営業利益に至っては48.3%減の1,075億円となっています。競合の日立建機の営業利益は約70%減でしたから、それに比べればダメージは小さいとはいえ、半減というのはやはり大きなインパクトがあります。

続いてFY20の第3四半期「のみ」です。

引用元:コマツ2020年度第3四半期決算説明会

第3四半期のみ(2020年10月〜12月)に限って見ると、連結売上高、営業利益ともに、対前年同期比の減少率が小さくなっています。営業利益率は累計で47.0%減だったものが、第3四半期で見れば25.4%減で、持ち直しの傾向が見られます。

決算説明によると、コマツが「伝統市場」と呼ぶ日本、北米、欧州については、未だに前年同期比半減程度の売上で、コロナ禍の影響が大きく回復にも時間がかかっています。一方同じく「戦略市場」と呼ぶ中国、オセアニア、アジア、中南米等については、伝統市場に比べた相対的な影響は小さく、足元でかなり回復してきているとのことです。既にプラスに転じている国もあります。

FY20の年間見通しは変更されず、営業利益で1,390億円(前年比45.5%減)でしたが、足元の回復傾向を考慮すると1,500億円は超えてくるだろうと予想されます。

バランスシート

続いてFY20第3四半期終了時点のバランスシートです。

引用元:コマツ2020年度第3四半期決算説明会

コマツはメーカーの中で好財務として知られているとおり、50.1%と手厚い株主資本比率となっています。大手自動車メーカーは20〜40%程度が大半であるため、それと比べるといかにコマツの株主資本比率が高いかがわかります。コマツはこれまで何度か買収を行ってきましたが、それでも財務に大きな影響はなく、今後さらなる買収もいつでも可能である状態、と捉えることもできます。

キャッシュフロー

キャッシュフローについては、FY20の第1〜第3四半期累計のフリーキャッシュフローで約1,130億円のプラスを確保しています。大幅減益といっても未だ十分な利益水準であるため、キャッシュフローにはかなり余裕があります。第3四半期末時点で2,000億円を超える現金及び現金同等物の残高があり、目先の資金繰りに苦戦することはまずないと考えられます。

投資指標

次に、この記事執筆時点の2021年1月30日現在の投資指標です。

・株価 2,862.5円

・予想PER 33.8倍

・実績PBR 1.52倍

・予想EPS 84.7円

・年間配当金 43円

株価は日経平均の上昇に合わせてコマツ株も上昇しており、ここ最近は3,000円を前後しています。通期業績予想がやや保守的な数字であるとはいえ、予想PERは30倍を超えており、足元の業績に対して株価はかなり高い水準と言えます。しかしながら、コマツの過去の利益水準や実力を踏まえると、市場が回復すればコマツの業績も大幅に回復すると見込めるため、現在の株価は妥当な水準ではないかと考えられます。

株主還元

上記のとおりFY20の年間配当金は1株あたり43円を予定しています。FY19が94円でしたので大幅な減配です。コマツは配当性向を「40%以上」と設定しており、基本的には利益に応じた配当ではあるものの、厳密な利益連動ではなく柔軟性を持たせています。今期はここから積み増すことは考えづらいですが、逆に急に無配になったりするようなこともなく、安心感を持つことはできます。

コマツは株主還元として、配当だけでなく自社株買いにも積極的な姿勢を見せています。あくまで「成長への投資を主体としながら」としつつも、「マーケットや財務状況等に応じて、機動的に実施していく考えです。」と発表されています。足元の株価水準では自社株買いは不要と考えられますが、株主資本比率が少し高すぎる面もあるため、株価が低迷した際には機動的に実施することが予想されます。

好財務であるが故にあらゆる選択肢を持っており、成長投資とのバランスを図りながら十分な株主還元が行われていると思います。

※ちなみに株主優待も設けられており、3年以上・300株以上保有するという条件を達成すれば、オリジナルミニチュアをもらうことができます。毎年異なるオリジナル商品が贈られるため、ファンの間では根強い人気があるようです。

引用元:コマツ会社ホームページ

課題と今後の見通し

ここまで決算関連の情報を中心に見てきましたが、今後のコマツの躍進を予想する上でポイントとなる技術や戦略についても見ていきたいと思います。

コムトラックスの活用

コマツといえばKOMTRAX(コムトラックス)と呼ばれる遠隔の機械稼働管理システムをいち早く導入し普及させたことで有名です。コムトラックスはコマツが販売する建機に標準搭載され、GPSによって建機の稼働状況データを回収することが可能です。

2000年ごろから標準搭載され、現在では搭載された建機が世界中で稼働しており、日々莫大な稼働データを回収できる体制を築き上げています。あらゆる業界でDXやIoTが叫ばれ始めた昨今ですが、既にコマツは約20年も前に実践し始め、十分なデータを回収するに至っています。

現在はこのデータを、需要予測、交換部品・修理のタイミング予測、買い替え提案などに活用しています。現時点でもデータを十分に活用できていると言えなくはないですが、これだけ長い期間多くの車両に搭載してタイムリーなデータを収集しているということは、潜在的な価値がもっとあるはずです。データを活用したサブスクビジネスを展開したり、データを編集・加工して他社や他団体に売却するなど、考えられる活用法はいくらでもあります。コムトラックスは他社に圧倒的に先行している点ですので、今後さらにデータ活用して新たな付加価値を生み出していくことに期待しています。

商品・地域別のM&A

コマツは日系のメーカーの中では珍しく、コンスタントに買収を行っています。2019年には林業機械メーカーの米ティンバープロ、2017年には鉱山機械メーカーの米ジョイ・グローバル、同じく2017年に鉱山機械向けソリューションプロバイダーの豪MineWare、2000年には建設・鉱山機械部品メーカーの米ヘンズレー・インダストリーズなどが挙げられます。

建設・鉱山機械は商品のラインナップが非常に幅広く、1社でフルラインナップを揃えるのは現実的ではありません。また、各社それぞれ得意商品や地域があり、たとえコマツやキャタピラーといった世界的企業でも全ての商品群や地域でトップになるというのは不可能です。

そこでコマツは特定の領域に強い企業の買収をコンスタントに実施しています。自社で商品を揃えることが難しい場合には買収を行い、商品ラインナップを幅広く揃えることで、大口顧客に対してまとめて提供することが可能となります。

また他に買収で特徴として挙げられるのが、ソリューションプロバイダーの買収も実施していることです。単に商品ラインナップを揃えるだけではなく、将来に向けてコマツが強化しているソリューションの分野でも買収が行われ、新たな段階に入ったと言えます。

「今後もM&Aは、新中期経営計画に掲げる本業の成長戦略のための重要な手段の一つであると考えています。」と発表されており、潤沢な資金を活かして特定の商品・地域・サービスを持つ企業の買収が今後もコンスタントに行われていくと予想されます。買収後の統合作業においてコマツの強みであるコムトラックスなどを盛り込むことができれば、シナジーを発揮することができるのではないでしょうか。

自動運転・電動化の推進

自動車業界においては100年に一度の大変革時代として、近年急速にCASEと称される技術の進化が起こっています。建設・鉱山機械業界でもそれに近い動きがあり、その中でコマツも自動運転や電動化を強力に推進しています。

自動運転については、鉱山向け無人ダンプトラックが最も有名です。無人運転が可能なダンプトラックと合わせ、オペレーションをサポートするソリューションも「Autonomous Haulage System(AHS)」として提供されています。鉱山は人が住むようなエリアから離れたところにあるのが一般的で、24時間フル稼働が求められることが多いため、運営会社にとって十分な人材の確保とそのコストが大きな課題となっています。そこでコマツの「Autonomous Haulage System(AHS)」が大活躍します。ダンプトラックに乗り込む人員が不要となり、複数のダンプトラックを中央管理室からモニタリングするだけで事足りるようになります。ダンプトラックはGPSと中央管理室からの指示を基に運行され、人が介在することなく24時間フル稼働が可能です。鉱山の現場に入る作業員が最小限となることで、安全面の向上も期待されます。

電動化も世界中の環境規制が強化される中で待ったなしの状況となっており、実際にハイブリッドの建機などは既に発売されています。しかし本格的な電動化は実現されていません。建設・鉱山機械は大型になるほど超高出力が求められるため、電動化には不向きとされています。そのため小型の建機等から徐々に電動化が進められていくと予想されており、コマツも電動化開発センターを立ち上げて開発を推進しています。

つい先日にはリチウムイオンバッテリーシステムを手掛ける米プロペラから供給を受けることを発表し、今後実証実験等を経て23〜24年の量産化を目指すとのことです。

自動車と異なり鉱山や建設現場で充電スポットを整備するのは困難であり、インフラの面からも課題は山積みです。今後どの程度のスピードで電動化が進むかは不明ですが、間違いなく世界のトレンドとしてその方向に動いているため、コマツも先陣を切って電動化を推進しています。

さいごに

ここまでコマツの現状と今後の見通しについて分析してきました。

非常に競争力が高く世界No.2として業界では地位を築いていますが、近年は売上が減少傾向にあります。また特に最大市場の中国において市場の伸びから大きく出遅れてしまっており、厳しい状況にあることも事実です。今後もコマツの強みとして「ダントツ」な部分を徹底的に伸ばし、盛り返してくれることを期待しています。

長くなりましたが最後までお読みくださりありがとうございました。

それではまた!

コメント