日野自動車(7205)の銘柄分析

企業分析

今回は、トラック/バスといった商用車の製造を手掛ける日野自動車(7205)についてご紹介したいと思います。

「トントン・トントン・ヒノノニトン♪」のCMでおなじみ(少し古い!?)の日野自動車は、CtoCがメインの会社であり、あまり馴染みが無いという方も多いかと思います。

しかし実際には私たちの生活を影で支えるインフラ企業の一つで、欠かすことのできない存在です。そんな日野自動車について、ビジネスモデルや財務状況、今後の見通しについてお話しします。

日野自動車の概要

日野自動車は主にトラック/バスの製造および販売を手掛ける商用車メーカーです。親会社であるトヨタ自動車が50.1%の株式を保有していますが、日野自動車自身も東証1部に上場しており、近年ガバナンスの観点から問題視されている親子上場企業です。

国内の商用車メーカーは他にいすゞ自動車、独ダイムラー傘下の三菱ふそう、そしてもう1社UDトラックスがありましたが、現在は2020年にいすゞ自動車に買収されたため、3陣営に集約されています。

日野自動車はトラックについては自社で製造していますが、バスについては事業規模が限られてしまうこともあり、競合のいすゞ自動車と合弁でジェイ・バスという会社を設けています。そしてジェイ・バスにてバスを製造し、販売は日野・いすゞそれぞれのブランドで行う形式をとっています。

日本のトラック市場は、大型・中型・小型の3つのカテゴリーに分けられます。大型トラックは主に東京-大阪など都市間の大量輸送、小型トラックは宅配やコンビニ配送などをイメージしてもらえると用途が分かりやすいかと思います。そして中型トラックはその中間にあたります。

日野自動車は特に大型・中型トラックに強みがあり国内でのシェアが高いです。一方小型はシェアが高くなく、近年CMを大量に打つなどして徐々にシェアが高まり始めてきたといった程度です。

海外については、製造拠点のある国が約30カ国、販売をしている国が約100カ国あります。欧州を除いてほぼ全世界に幅広く展開していますが、その中でも強みがあるのは東南アジア市場です。タイ・インドネシアを中心に東南アジアでは国内同様の高いシェアを獲得できており、製造の現地化もかなり進んでいます。

他には市場規模の大きい米国では販売台数としてはそれなりにありますが、シェアは低く存在感はあまりありません。直近では、環境規制に伴うエンジン認証が取得できなかったことが公表されており、今後さらに市場シェアが低下してしまうことが予想されます。なお数年前に米国に新工場を建設しており、台数が稼げない中で償却費負担を賄えないことも危惧されます。

ビジネスモデル

日野自動車が販売する商品・サービスは、基本的に以下3つに分類することができます。

① トラック/バスの車両

② トラック/バスのアフターサービス(トータルサポート)

③ トヨタ向け車両/ユニット

トラック・バスの車両

最もイメージがつきやすく事業割合が大きいのは、やはりトラック・バスの車両です。その名のとおりトラック/バスを製造し、車両を販売することで収益を得るビジネスです。

車両販売は原点であり売上割合も非常に大きいですが、利益率はあまり高くないと言われます。特に好不況の影響をもろに受けやすく、不況期には一気に販売が減速してしまう他、在庫を捌くために他社との安売り競争にも陥りやすい傾向にあります。

海外市場においても中国系・インド系が圧倒的安さに加え、年々技術力を高めてきていることもあり、単純な車両販売の勝負では厳しくなりつつあります。

トラック・バスのアフターサービス(トータルサポート)

アフターサービス(トータルサポート)とは、車両販売後の修理や点検、コンテンツ提供などのことを指します。トラック/バスは商用車として高い稼働率が求められます。顧客である物流会社などは、車両をフル稼働させることでビジネスを成り立たせ収益を得ています。

そのため、車両を単に販売して終わりではなく、販売後に顧客が車両をフル稼働させられるよう、全国に張り巡らせたディーラー網によりすぐに修理・点検ができる体制を整えています。顧客にとってはそのサポートが手厚いことが非常に重要であるため、車両単体で購入を決定するわけではなく、アフターサービスまで含めたライフタイム全体の価値で購入を決定することになります。

日野自動車にとってこの修理・点検も重要なビジネスであり、車両販売に比べ圧倒的に高い利益率を誇ります。修理・点検のサービス料もさることながら、加えて消耗品の交換部品を販売することでも収益をあげることが可能です。交換部品はカー用品店などで安く手に入れることもできますが、修理・点検時であれば割高な純正品を販売できる確率が高くなります。なお交換部品は、車両生産に使用する場合の数倍の値段で販売できると言われています。

そのため日野自動車含む商用車メーカー各社は、いかに自社系列のディーラーで修理・点検をしてもらい、さらには純正品の交換部品を販売するかが利益に大きな影響を与えます。

この点日野自動車は以前から非常に注力している分野であり、車両の単体販売で利益をあげることが難しい中、この分野で利益をあげていくことを狙っています。

トヨタ向け車両/ユニット

存在感は小さいながらも、親会社であるトヨタ向け車両/ユニット販売は一つの大きな事業です。一般消費者にはあまり知られていませんが、トヨタブランドのランドクルーザープラドやFJクルーザー、ダイナなどは日野自動車が製造しています。同様にトヨタが米国で製造・販売しているピックトラック向けの主要ユニットも製造しています。

これらは単価自体は決して高くありませんが、トヨタ事業ということでトラックに比べて台数規模もかなり大きいです。親子間取引となりますので一定の利益率は確保することができ、安定したビジネスの一つです。

ただしこの事業はあくまでトヨタ主導のため、日野自動車の努力や技術により今後劇的に伸ばしていくことは難しいと思われます。むしろトヨタ側の都合で将来的に減少もしくは消滅する可能性も孕んでいます(親子関係にあるためそう簡単に消滅するとは思えませんが)。

おまけ:新領域

社長肝入の「Challenge 2025」の中で、上記の既存3事業に加えて、「新たな領域へのチャレンジ」が掲げられています。具体例としてデータ活用によるDXの加速が挙げられています。

近年スタートアップ企業への出資や社内体制の大幅な見直しなど、新領域への投資姿勢を鮮明にしています。特にデータ系企業との提携に力を注いでおり、車両走行データを活用した新たなソリューションの開発などに取り組んでいます。

これまでの蓄積で特に国内では相当な数の車両保有台数があり、その車両の走行データはビッグデータとして宝の山とも言えます。それを外部企業と組むことで分析し、故障や買い替えタイミングの予測に活用するなどしているとのことです。

さらにはここ数年物流業界で人手不足が顕在化していることから、車両の位置データを活用して配車の効率化にも取り組んでいます。

どの会社もDXを掲げているこのご時世、マネタイズまで持っていける企業はごくわずかかと思いますが、日野自動車は基盤となるビッグデータを有していることから、工夫次第で将来化ける可能性があると感じます。

財務状況

続いて日野自動車の財務状況を2021年3月期の第2四半期決算をベースに見ていきます。

損益

以下決算短信からの抜粋です。

引用元:日野自動車株式会社_決算短信(2021年3月期_第2四半期)

前年同月比で大幅に落ち込んでおり、非常に厳しい決算内容と言えます。コロナ禍の影響をもろに受けているとはいえ、売上が約30%も落ちてしまっているのは気になる点です。利益もそれに伴い赤字転落となってしまっています。

ちなみに今期に限らずここ数年売上・利益ともにジリジリと減少傾向にあり、コロナによってとどめを刺されたといった感じです。

近年国内需要は非常に堅調でしたが、国内新工場や米国新工場の設立による償却費負担の増加、CASEの進展による研究開発費の増加等があり、利益を圧迫している状況にあります。

ただ将来に向けた投資を緩めるわけにはいきませんので、特に研究開発費についてはコロナ禍でも踏ん張って削減することなく今後も種まきを継続してほしいと思います。

なお乗用車メーカーを中心に、足元では単月で前年比プラスの生産・販売台数となっており、通年でも前年比のマイナスが縮小傾向にあります。そのようなトレンドにある中で、今後発表される決算で日野自動車がどの程度立て直しているかは要注視です。

貸借

同様に貸借対照表の概要のみ抜粋します。

引用元:日野自動車株式会社_決算短信(2021年3月期_第2四半期)

自己資本比率は44.1%となっており、自動車メーカーとしては十分過ぎる水準かと思います。近年新工場など大型の投資が続いていましたが一段落し、今後大規模な設備投資は想定されていない模様です。

配当性向を35%に設定しているため、今後M&A等が無い限り自己資本比率がさらに上昇していくと予想されます。従来自社株買いは行われていないようですが、今後行われることも考えられます。ただもし将来につながる投資案件があるのであれば、株主還元よりも事業投資を引き続き優先して取り組んでもらいたいものです。

キャッシュフロー

キャッシュフローは四半期報告書からの抜粋です。

引用元:日野自動車株式会社_四半期報告書(2021年3月期_第2四半期)

やはり損益の悪化に伴い、営業CFは前年同月比で大幅に減少しています。ただそれでもプラスは維持しており、たな卸し資産を適切に圧縮したことなどが影響しているようです。

投資CFについては有形固定資産の取得に伴いマイナスが継続しています。将来に向けた投資は不可欠ですので、引き続き継続してもらえればと思います。

なお財務CFはプラスに転じています。これはコロナの影響で手元資金を確保するために短期借入金を増やしたためで、一時的なものと思われます。長期借入金の返済は順調に進めており、数年前に比べると長期借入金の額は相当小さくなりました。

ただ企業規模の割に長期借入金がやや少なすぎる気もしており、もう少し積極的に長期の借入をしても良いかなと感じます。

CF全体としては業績の落ち込みの割には健全と言え、特に目立った問題はないように思います。

今後の見通し

ここまで現状について述べてきましたが、向こう数年はさらに厳しさが増していくと予想しています。特に技術確変は待ったなしの状況であり、限られたリソースの中で効率的に研究開発投資を継続していかなければなりません。

自動運転や電動化といったトレンドは、あらかじめ決められたルートを走行する商用車にほど効果があります。そのためこのトレンドを捉えられれば一気に躍進できますが、逆に遅れた場合には厳しい未来が待っています。

日野自動車の企業規模は自動車メーカーの中でかなり小さい部類で、開発陣のリソースや資金的な規模も限られます。近年急速に外部との提携や出資を行っていますが、今後もそれらを継続すると同時に、親会社であるトヨタの技術力をより活用していくことが求められます。

市場規模は商用車の販売に限らず物流業界にも拡大できる可能性があり、将来的なチャンスは非常に大きいです。足元の厳しい環境を乗り切り、ぜひ将来大きく飛躍してもらいたいと思います。

最後に一点、これは完全に個人的な予想ですが、近い将来トヨタによる完全子会社化があり得ると予想しています。数年前にダイハツが完全子会社となった一方、日野自動車は現在も50.1%出資のまま東証1部上場を継続してます。

ガバナンスの観点から親子上場は好ましくない他、今後の市場予想の中で両社の相互技術活用によるシナジーは非常に大きいと考えられます。トヨタはいつでも買収できるだけの資金力はありますし、完全子会社化すれば少数株主に利益が流れてしまうこともありません。

どこかのタイミングであり得ると予想しており、その際は株価に大幅なプレミアムが上乗せされますので、既存株主にとって大きなチャンスとなることが考えられます。

以上、完全な個人的予想も含めて、日野自動車についてご紹介してきました。

それではまた!

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