決算短信を3分でチェックする方法

企業分析

上場企業であれば四半期ごとに決算短信を公表します。企業の公式な決算情報をいち早く入手できる資料として、株式投資家は当然のことながら、ビジネスマンにとっても非常に有益です。しかし決算短信の特性上あまりにも資料が無機質で、内容が分かりづらい、どこを見たら良いのか分からない、という方は少なくありません。またそもそも決算短信がどこに公開されているのか分からない、時間がなくてわざわざ見てられない、という方も多いかと思います。

今回はその決算短信について、各企業の最新の決算短信にすばやくアクセスし、最低限見るべきポイントについてご紹介します。ごく簡単なコツさえ掴めば、1企業あたり約3分もあれば決算短信へのアクセスから概要の把握まで行うことができますので、ぜひお試しください。

決算短信とは

決算短信とは、簡単に言うと企業の四半期の決算速報です。上場企業であれば、上場している証券取引所の適時開示ルールに従って、四半期ごとに作成し提出することになっています。企業ごとの四半期の締日から45日以内に提出しなければならず、例えば6月末が締日の四半期であれば、45日後の8月中旬までに提出することになります。

あくまで決算短信は証券取引所のルールに沿った決算速報であり、情報量が限られる他、監査法人による監査が完了していない状態のものになります。しかしながら、決算短信にも各種財務諸表や企業の定性的情報などが含まれており、よほど入念な企業分析等を行う人でも無い限り、決算短信でも十分すぎると言えます。

気になる企業の決算短信にアクセスする

ではここから、各企業の決算短信にどのようにアクセスするかについてご紹介します。アクセス方法は多々ありますので、やりやすい方法で試していただければと思います。

取引所の適時開示情報閲覧サービス

決算短信は証券取引所に提出されるため、東証上場企業の決算短信であれば適時開示情報閲覧サービスにアクセスし、気になる企業名を検索すれば入手できます。ただ、お世辞にも使いやすいとは言えず、あまりおすすめはしません。

民間の検索サービス

決算短信は規格化されたフォーマットで作成されており、データ連携させることで決算短信を閲覧できるようにしているサービスが数多くあります。

代表的なサービスとしてはまず日経新聞が挙げられます。適時開示のページから、人気ランキング形式で企業の適時開示情報が見れる他、企業名を自ら検索して閲覧することも可能です。会員登録が必要(無料会員でもOK)となりますが、どのような企業が注目されているかが分かる点は面白いかと思います。

続いて最もオススメなのが、バフェット・コードというサービスです。企業名さえ入力すれば過去の開示情報を四半期別に簡単に閲覧できることに加え、グラフでビジュアル化された推移も見ることができます。使いやすさ・見やすさ・情報量の豊富さが圧倒的です。

参照:バフェット・コードの閲覧画面(日産自動車の例)

他にも各証券会社や民間の検索サービスでも、簡単に決算短信にアクセスすることができます。

企業ウェブサイトのIRページ

大半の企業は決算短信を提出したタイミングと同時に、自社ウェブサイトでも決算短信を公表します。そのため、各企業のウェブサイトからアクセスし閲覧することが可能です。上場企業であればIRカテゴリーを設けていることが多いため、そこから確認できます。

企業の自社ウェブサイトにアクセスすることのメリットとしては、決算短信だけでなくその他の公開情報も合わせて閲覧できることです。決算短信の無機質な情報を補うため、決算説明資料や補足情報として販売台数や客数・客単価などの情報を合わせて公表している企業が多いです。

そのため特定の企業についてじっくりと情報収集したい、という方には企業のIRページを訪問することをオススメします。

決算短信で見るべきポイント

決算短信にアクセスできたら、次は実際に決算短信のどこをどのように見るかのコツが欠かせません。決算短信は情報量が限られていると言っても、10〜20ページ程度に及ぶことが大半です。基本的には文字と数字の羅列で、決算関連の資料を見慣れない方にとっては何が重要でどこを見れば良いのかが分かりません。

そこで、最低限、決算短信のココさえチェックすれば企業の決算について状況を把握できる、というポイントを3つ挙げたいと思います。基本的に見るのは最初のページだけです。具体例として日産自動車の2021年3月期 第3四半期の決算短信を用いて紹介します。

参照:日産自動車 2021年3月期 第3四半期決算短信

ポイント① 連結経営成績(損益)

まず最重要と言っても過言ではない連結損益状況です。売上高に加え、営業利益、経常利益、純利益、各段階における利益の金額と、前年同期比の増減割合が表示されています。

ここで表示されるのはその年度の累計の数字のため、2021年3月期の第3四半期であれば、2020年4月〜12月の累計の数字ということになります。この点は注意が必要で、第3四半期に限った四半期のみの数字はここで確認することはできません。

具体的に日産の事例で見てみると、売上高は5,317,447(単位:百万円)ですので、つまり約5.3兆円ということになります。そして前年同期、つまり2020年3月期の第3四半期累計は売上高が約7.5兆円あったため、前年同期比でマイナス29.2%となってしまっています。

同様に営業利益、経常利益、純利益は、前年同期は黒字だったものの、2021年3月期の第3四半期は赤字に転落しており、そのため前年同期比の増減割合が示されていません。

これらのことから、日産の業績は前年同期比で大幅に落ち込んでおり、赤字に転落してしまったということが読み取れます。

ポイント② 連結財政状態(貸借)

次に連結財政状況、つまり貸借対照表の状況ですが、これは合計額のみの非常に簡易的なものとなっています。総資産、純資産それぞれの合計額が示されていますので、差額で負債を算出することができます。

ただ総資産と純資産の総額を見ただけではそれが良いのか悪いのかの判断基準がありませんので、基本的にここで見るべきポイントは自己資本比率です。自己資本比率は純資産を総資産で割った数値で、企業が保有する資産の内何%が自己資金によるものかを表しています。逆に言うと、自己資金以外の資産は外部からの負債によってまかなっていることになります。

そのため自己資本比率は高ければ高いほど外部からの負債に依存していないため、健全であるということが言えますが、一概に高ければよいというものではなく、低くなり過ぎていないかを確認することが目的です。もし自己資本比率が低過ぎると、外部からの負債に依存していることになり、いずれ返済が滞って破産につながります。

自己資本比率は何%あれば安全という明確な基準はありませんが、製造業であれば少なくとも30%程度あれば安全と言われています。日産の事例で言うと自己資本比率が22.9%で、前年同期の23.9%から低下しており、製造業の目安である30%を大幅に下回っているため、決して安全水域とは言えない状態です(かと言って危険でもない)。これは今期の赤字により純資産が減ってしまったことが一番の要因と考えられます。

ポイント③ 連結業績予想

3つ目が通期の業績予想です。四半期ごとの決算短信では、その四半期終了時点までの「累計実績」の数値が示されています。そして1年間の累計で業績がどのようになりそうかという「予想」を示したものが通期の業績予想です。

もし2021年3月期の第3四半期の決算短信であれば、2020年4月〜12月までの累計実績が示されていますが、2021年1月〜3月についてはまだ分かりません。しかし足元の状況や今後の予想を踏まえて業績予想を示すことで、投資家を始めとしたステークホルダーに対して目安となる数字を示します。これによりステークホルダーは、過去の実績だけではなく今後の見通しも踏まえた状況判断ができることになります。

この業績予想に関しては注意点があり、企業は相当保守的な業績予想を発表する傾向にあります。今後マーケットが悪化するかもしれないし、自社で何かしらのトラブルが発生するかもしれない、などのリスクを考慮し、後で業績予想の下方修正を避けるためにあらかじめ低めの予想を発表するのです。また、業績予想の修正は大幅に見通しが変更された場合にのみ行うとされており、その基準を下回る場合には企業は業績予想の修正を発表する必要がありません。そのため、あくまでも参考程度として業績予想を参照することをオススメします。

日産の事例で言うと、通期の業績予想は7.7兆円、営業利益はマイナス2,050億円とされています。実はこの数字は今回上方修正されており、当初保守的に見積もっていた数字よりはマシになりそうだ、という事実を示しています。

気になる点があれば深堀りしていく

以上、決算短信へのアクセス方法、そして決算短信で最低限見るべきポイント3点についてご紹介しました。これだけであれば1社あたり3分もあれば確認することが可能で、その企業の業績が良いのか悪いのか程度はざっくりと掴むことができます。

これはあくまで最低限見るべきポイントであって、もしその中で気になる点があれば損益計算書や貸借対照表の中身まで見ていくことになります。さらには、企業が決算短信とともに公表することの多い決算説明書などにも目を通すことで、なぜ業績が良くなった(悪くなった)のか、何に注力していて今後の見通しはどうなりそうか、といった定性的な情報や企業の取り組みも把握が可能です。

まずは企業の業績把握への第一歩として、決算短信のアクセス方法と見るべきポイントについてマスターしていただければと思います。

それではまた!

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