自己責任の時代 確定拠出年金が主流に

投資の考え方

「確定拠出年金」という言葉を近年耳にするようになったという方も多いかと思います。聞いたことはあるけどよく分からないという方向けに、確定拠出年金について述べていきたいと思います。

確定拠出年金とは

Xさん
Xさん

私の勤め先に確定拠出年金が新たに導入されました。会社に言われるがままに登録はしたものの、よく分かりません。

確定拠出年金とは、拠出額が確定した年金です。

これだけだと何も説明になってないですね… 確定拠出年金の位置づけを把握するために、少し日本の年金制度についてご紹介したいと思います。

日本の年金制度と確定拠出年金

日本の年金制度は大きく以下の3つに分けられ、3階建ての年金と言われます。

国民年金:1階に相当し老後の生活を支えるベース。20歳以上の全国民が原則として対象。

厚生・共済年金:2階に相当し国民年金に上乗せされる年金で、会社員または公務員の場合は原則として強制加入。1階部分と合わせ、「公的年金」に分類される。

企業年金等:3階に相当し上記に更に上乗せされる年金で、加入は任意。

上記3分類の内、今回テーマとしている確定拠出年金は③に該当します。「企業年金等」には大きく2つのタイプがあり、1つ目は確定拠出年金、2つ目は確定給付型年金(退職一時金含む)です。

また確定拠出年金は更に2つのタイプに分類され、企業型確定拠出年金と呼ばれる企業が制度を設けているタイプと、個人型確定拠出年金と呼ばれる個人が自分の意志で加入するタイプの2種類が存在します(これがiDeCoと呼ばれる制度です)。今回は現時点で圧倒的に加入者の多い企業型確定拠出年金に関わるお話を中心にしていきます。

確定拠出年金と確定給付型年金

企業年金の2つのタイプである確定拠出年金と確定給付型年金についてご紹介します。

確定拠出年金は2000年頃に日本で制度が設けられたものの、従来とは全く異質の年金制度で制限も多く設けられていたことから、普及が中々進みませんでした。その間確定給付年金が圧倒的大多数を占めていました。

しかしながら確定拠出年金は制度が年々改良され、導入企業のメリットが注目されたことや国民の理解が進んできたことにより、徐々に普及が進み始めます。そして今や加入者が1,000万人にも迫るほど浸透しています。

確定拠出年金は従来主流だった確定給付型年金とは大きく性質が異なります。

比較項目確定拠出年金確定給付年金
特徴「拠出額」が先に確定している「給付額」が先に確定している
資金の運用者本人(個人)企業(組織)
将来の受給金額未確定確定
受給開始時期60歳以降退職時
運用利回り本人の運用成績次第企業が定めた予定利率
マイナス
運用時の対応
本人が負担
(企業からの補填なし)
企業が負担
(退職給付債務を計上)
退職時の移管移管可能
移管され残高維持)
原則不可
(移管されずその時点減額支給)
「確定拠出」と「確定給付型」年金の比較表

特に注目すべき点は、資金の運用者が「企業」から「個人」に変わり、個人が自らの年金資産を自己責任で運用しなければならなくなった点です。従来の確定給付型年金で企業があらかじめ定めた給付額を必ず確保しなければならず(JALのような例外もありますが…)、運用が想定を下回った場合には企業がその不足分を補填しなければなりません。

確定拠出年金の加入者が増加してきた理由

企業が年金資産を補填する場合、企業は退職給付債務を計上しなければならないため、本業とは直接関係のないところで会計上非常に大きなリスクを背負うことになります。

一方確定拠出年金では、年金資金の責任が個人に移ります。それにより企業は一定額を拠出すればその後の給付額について責任を負う必要がなく、会計上のリスクを回避することが可能です。

また従業員の立場から考えた場合にも大きなメリットは存在します。従来の確定給付型年金では、定年退職もしくはそれに近い勤続年数でなければ退職時に満額の給付金を受給することができず、それ未満の場合は大幅な減額となってしまうのが一般的でした。例えば同じ企業に10年勤めた場合、本来10年間分の給付金を受給できるはずですが、大幅に減額となり本来の給付金の30〜40%しか受給できないといったケースが一般的です。

確定拠出年金の場合には、年金資産が個人の勘定として管理されているため、仮に何年で退職したとしても減額されることはなく(3年以上という縛りはありますが)、転職先もしくは個人型の確定拠出年金として継続することが可能です。

転職があたり前となったこのご時世、転職による年金制度のデメリットを解決できる制度であるため、特に外資系や離職率の高い業界などにおいて積極的に確定拠出年金が導入される傾向にあります。またフリーランスになる場合にも個人型確定拠出年金(iDecCo)への移管が可能で、個人の資産を継続して運用することができます。

これらの背景から、確定拠出年金の加入者は年々増加傾向にあり、今後さらに制度が定着し加入者が増加していくことが予想されます。政府も自助努力の時代として確定拠出年金の普及を後押ししています。

確定拠出年金の資産運用

確定拠出年金では、各個人が自らの意思で年金資産を運用していかなければなりません。その際、確定拠出年金制度の特徴を理解しそれに見合った運用をしていくことが重要となります。

特徴① 個人の拠出金は所得控除の対象

個人が確定拠出年金に資金を拠出した場合、その拠出額は所得税・住民税を計算する際の所得から控除することが可能です。つまり所得税・住民税の計算の基礎となる課税所得を引き下げることができ、結果として節税することができます。所得により減税額は異なりますが、目安として年収500万円の人であれば、拠出額の約20%分節税することが可能です。年収が高く所得税率が高い人ほど、拠出による減税メリットをより多く享受できます。

拠出額に対し20%の節税効果があるということは、20%分のリターンをリスクなしに確実に得られるということを意味します。

よって、手元の資金に余裕がある限り、上限額ギリギリまで拠出することが最も合理的な選択となります。

なお企業型確定拠出年金の場合、企業が拠出した金額については所得控除の対象となりませんが、個人がマッチング拠出やiDeCoを併用して拠出した金額は、所得控除することが可能です。

特徴② 運用益は非課税

確定拠出年金の資産を運用することで得た運用益は非課税です。通常の資産運用であれば所得税・住民税合わせて20%が運用益に対して課税されますが、確定拠出年金では非課税という大きなアドバンテージがあります。

そのためもし各個人が確定拠出年金とは別にご自身で運用している資産がある場合、より運用益の見込める高いリスク商品への投資を確定拠出年金の資産で行うことが合理的です。確定拠出年金資産をポートフォリオの一部と捉え、非課税メリットのある確定拠出年金でリスク商品への投資を行い、非課税メリットのないそれ以外の資産ではよりリスクの抑えた商品への投資が考えられます。

また複利効果で長期運用を行うことができるため、この非課税メリットは長期で考えると非常に大きな資産増殖効果があります。

特徴③ 60歳まで受給不可

確定拠出年金は早くても60歳まで受給することができません。これは確定拠出年金のデメリットである一方、資産運用の複利効果や想定利回りを考慮するとメリットとも言えます。

仮に30歳の人が加入した場合、60歳で受給するまで運用期間が30年もあります。そのため強制的に超長期の資産運用となります。リスク商品に投資して運用した場合、短期的にはリターンが大きくばらつきますが、長期で見れば見るほど想定された運用利回りに収束していきます。リスク商品ほど想定利回りは一般的に高いため、超長期運用をリスク商品で行うのが合理的と言えます。

しかしながら年齢を重ね受給年齢が近くなってきた場合は、相場が大きく下落した際に回復する期間が見込めない可能性があるため、リスク商品の比率を下げ安全資産(元本保証型の預金や債券など)の比率を高めていくのが無難です。

確定拠出年金で選ぶべき商品は?

上記の特徴を踏まえると、確定拠出年金で選ぶべき商品タイプが見えてきます。当然のことながら資産運用は各個人の意思決定ではありますが、ここではあくまで合理的な商品選択について述べます。

想定運用利回りの高いハイリスク・ハイリターン商品に100%投資(例:外国株投資信託)※ただしアクティブ運用の商品は除く

これが私の考える最も合理的な商品選択です。先に述べた通り、あくまで確定拠出年金は各個人のポートフォリオの一部と考え、資産全体で運用戦略を考える必要があります。

確定拠出年金には運用益が非課税というメリットがありますから、よりリスクの高い商品への投資を確定拠出年金の資産で行うべきです。そして残りの資産で安全な商品(預金等)に回すか更にリスク商品に回すかのリスク調整を行うのが理想的です。

ただしここで言うリスクの高い商品とは、あくまで手数料が低く抑えられたパッシブ運用の商品群の中から選択しなければなりません。アクティブ運用の外国株等は更に高い想定利回りではあるものの、手数料が非常に高く実利回りで考えれば高くありません。

元本確保型の商品への投資は実質的に損している

リスク商品への投資が最も合理的ではあるものの、実際に周囲の方々を見ると元本確保型の定期預金等を選択している人が非常に多くいます。運用に不慣れな人にとっては、資産運用=ギャンブルと捉える傾向があり、損をしたくないという思考から元本確保型の商品を選択しがちです。

確かに元本確保型商品であれば、拠出時の節税メリットのみ享受して、あとは資産をリスクに晒すことなく将来確実に受給することができます。元本が確保されているため額面が拠出額を下回ることはありません。

しかしながらこの考えには重大な欠点があります。それは、本来得ることができるはずだった運用益の機会を逃しているということです。

確定拠出年金が普及する前は確定給付型年金が主流だった(今もまだそうですが)ことは先に述べました。確定給付型では企業が年金資産の運用を担っており、リスクを考慮した上でそれなりにバランスの取れた資産運用を行っています。低金利下の現在においても想定利回りを2.0~2.5%程度として設定している企業が多く、つまり各個人は確定給付型年金の下ではその利回りを数十年に渡り享受できることになります。

一方で元本確保型商品に投資した場合は、想定運用利回りはほぼゼロ%なわけですから、従来得られていた利回りの機会を手放していると考えることができます。これが数十年に及ぶ複利効果では非常に大きな影響となります。

また現在の日本ではインフレを想定しづらいですが、将来インフレが進んだ場合に、元本確保型の商品であれば額面は減らないものの価値として実質的に目減りしてしまう可能性も考えられます。

加入者の運用実態

確定拠出年金の運用について、ここまでいかに元本確保型での運用が非合理的かを述べてきました。

しかしながら、企業年金連合会が公表している加入者の運用実態調査によると、以下の状況となっています。

企業年金連合会「確定拠出年金実態調査結果」より引用

なんと年金資産の約半分が元本確保型の商品に配分されています。残り半分が投資信託等、つまりリスク型の商品ということになります。企業年金連合会によると年々元本確保型商品の割合は減少傾向にあるものの、まだ半分が元本確保型に投入されている状況です。

資産運用に対する理解が不足し、「とりあえず損したくない」という思考から元本確保型商品を選択している人が多数いることが考えられます。

企業によってはデフォルト商品(各個人が何も商品を選択しない場合に自動的に選択される商品)を投資信託に設定し、より合理的な商品選択に仕向ける動きも一部に見られますが、そもそも企業の確定拠出年金担当者に理解が欠如しているケースも多く、まだ浸透はしていません。

まとめ

近年急速に普及してきた確定拠出年金について、制度の特徴や合理的な商品選択の観点から紹介しました。

改めてまとめると、以下が私の考える最も合理的な確定拠出年金の資産運用方法です。

拠出上限額ギリギリまで拠出

ハイリスク・ハイリターン商品に100%投資(例:外国株投資信託)※ただしアクティブ運用の商品は除く(パッシブ運用の商品を選択すべき)

あとは放置し運用益の複利効果を最大限享受

これだけです。淡々と毎月拠出上限額までの拠出を継続し、リスク資産としてパッシブ運用の投資信託に100%投資し、60歳以降まで継続するのみです。リバランスは受給年齢が近くなるまで必要ありません。現在の制度では受給開始年齢を70歳まで遅らせることも可能です。運用益の複利効果を最大限に享受するためには、当面の資金に余裕がある方は70歳まで遅らせることが合理的です。

以上、確定拠出年金についてでした。確定拠出年金は歴史の浅い制度で、年々制度の改良が行われています。今後も毎年変更されていくことが予想されるため、制度をキャッチアップし使いこなしていくことが求められます。

それではまた!

コメント

  1. […] […]